大人の学びにとって必要なのは「適切な努力」と「続ける力」

フリーペーパー「おともり」

フリーペーパー「おともり」

コムラボ代表理事の山田です。寒くなってきたので子どもたちが鼻をズルズルやってます。「袖で拭かないで」と言いつつ、自分もやっていたなぁと・・・。

今春からスタートしたフリーペーパー「おともり」はおかげさまで3号発行です。私も理事としてNPO法人おともりに関わっています。

私への相談は徐々に減ってきて、企画から紙面作りまで彼女たちが自走できるようになってきました。(素晴らしい)

足利市から在宅ワーク講座を委託して4年目になります。丁度、在宅ワーク講座をはじめた頃に参加したNPOマーケティングプログラムはコムラボにとって大きな経験でした。ここで培った知識・技術を用いて、コムラボならではのPDCAを回しつつ「地域で働きたくても働けない女性の課題解決」に取り組んでいます。

事業を進めていく上で分かったのは近道はないということ。結婚・出産というライフステージの変化でキャリアが途絶えた方の「大人の学び直し」であること。様々なキャリアを歩まれた方が受講するので、知識も技術もバラバラ。在宅ワーク講座を受けた後の「ありたい姿」も異なります。受講者1人1人で求めているものが違います。学校と大きく異なる点です。

1つやれば全員が解決する魔法の手段があれば良かったのですが、そうではない。予算も時間も限られる中で、どうやっていこうか悩ましいところです。4年目の今年に考えたのは「在宅ワーク」という前提をいったん捨てること。在宅ワークはあくまで仕事をITでやるだけの手段だと思います。在宅ワークは出来るけど、リアルワークが出来ないというのは考えにくい。

お仕事の流れ

お仕事の流れ

在宅ワークでやりやすい製作や作業の業務を図にすると、ざっくりこんな流れになります。

在宅ワーク講座 1年目、2年目の重点箇所

1年目、2年目はライティング講座とデザイン講座を行いました。この2年は「学生ではなく大人の学び直しなので業務経験がある」前提です。実際どうなったかというと、受講後に在宅ワークを行う人は多くなかったです。「思ったより簡単じゃなかった」「講座を受講すれば在宅ワークできると思った」という声も。交流会なども含め、受講者とコミュニケーションを重ねていると違和感が出てきます。なぜだろう?と考えていくと前提条件が違うことに気づきました。(妊娠出産、復職、子どもの進学で時間が取れないなどの理由もありました)

従業員と個人事業主

従業員と個人事業主

受講者の多くが歩んできたキャリアは「従業員」、在宅ワークは「個人事業主」にあたります。先に挙げた図の「お仕事の流れ」でいうと、従業員の場合、業務の全体的な経験がない、もしくは薄い。例えば「請求書の書き方が分からない」「納品時にメールでお客様へどんなことを伝えたら良いか分からない」「お客様から入金がないのですがどうしたらいいですか」という問題が発生。エントリーシートに「PC事務経験あり」と書かれていても実際に作業を見ているとフォルダの作成やファイルコピーが怪しい人も。

実際にあった質問ですが「クラウドソーシングサービスに登録すれば仕事が貰えるんでしょう?」という認識はどちらかというと従業員視点からくるものかなと。スキルセットだけ整えてもダメで、マインドセットを変えていく必要があります。ドカンと事業の難易度が跳ね上がりました。

子育てしながら学ぶことの難しさ

子育てしながら学ぶことの難しさ

クラウドソーシング(CS)で仕事を受注するにはスキルが必要です。スキルがなくても出来る仕事もありますが、数円の単価。「ネット内職」状態になります。または、医学的根拠がない記事を乱造して新聞沙汰になった「WELQ事件」に代表されるような「Googleで検索した結果をコピー&ペーストで原稿を作る」非常に筋の悪い仕事を受ける羽目になります。在宅ワークで受けた仕事が誰かの健康・人生に悪影響を及ぼすことまで想像できる人は少ないと思います。コムラボでは「こういう仕事は受けてはダメ」と伝えています。

きちんと仕事ができるような知識・技術は時間を掛けて学んでいく必要がありますが、子育て中のお母さんはなかなかその環境を用意することが出来ません。親族から「子育てをしっかりやりなさい」「子どもを預けてまでするなんて・・・」「家事を疎かにしてまでやることか」「パソコンを買い換えたいって?それでいくら稼げるんだ」実際に受講者から聞いた話です。クラウドソーシングできちんと稼げるようになるまで待ってくれ、と言えない状況があります。講座の基本設計を変える必要があるなと考えました。

重点箇所を変える

重点箇所を変える

数年やって分かったのは、受講者のみなさんは真面目。コミュニケーション能力も高い。仕事を引き受ければきちんとやる方が多いです。それであれば「作業」する前の部分を重点的にやって「受注」につなげる。受注したら納品するまでの「作業」を学びながら進めていく。学びの部分をコムラボが伴走支援する。コムラボの講座は、これから自分で学びながら仕事をするためのきっかけづくりです。

受講者へ「自分たちで地域の仕事を作ってみては」と声を掛けて創刊したのがフリーペーパー「おともり」です。地域のメディアとして、きちんと取材をして記事を書く。事実確認をしっかりやる。取材を通して地域との関係性を作り、広げていくことで更なる受注につなげる。スタートしたばかりですが、冒頭のように徐々に成果が出つつあります。「おともりを作って山田さんの言うことが分かりました」とメンバーから聞いて嬉しかったです。メディアを発行することで「貰う側」から「与える側」にシフトします。行動することが一番の学びです。

適切な方向性と努力 夢と可能性を広げよう(上毛新聞社)

適切な方向に向かい適切な努力をすれば夢のかなう確率は限りなく高くなる
自分の置かれている環境で適切な努力をし、その時々に与えられるチャンスに一生懸命取り組めば

これは上毛新聞社コラムの一節です。以前から講座で「答えはないから正解は求めないでください。ただ、在宅ワークをする上で、正しい努力の方向性は示せると思います」と伝えています。「正しい努力」より「適切な努力」の方が表現がしっくりくるなと思いました。

指導要領が整備されている学校に比べ、社会に出た大人達の「学び直し」には怪しい誘惑が多いです。「こっちの方が稼げる」「こっちの方が楽」・・・誰もがそうですが苦労するより楽をしたいし、同じ時間を掛けるならもっと収入が欲しいと思うでしょう。ダークサイドに堕ちていく人をたまに見かけます。ああ、残念だ、と思いつつ、適切な努力の方向性を示し、学び続けるための環境を地域に整えていきます。

講座をはじめて3年でおともり設立、4年目で成果が出つつあるのかなと。人を育てるというのは共創だと思っていて、私たちもたくさんのことを受講者から学んでいます。成果の上げ方、継続性をどう高めるかの方向性は見えてきたような。何事もやってみないと分からないし、続けてみないと分からないこと多いです。毎日が勉強。

次の1手を準備しつつ、日々淡々と進んでいきたいと思います。

コムラボでは在宅ワーク講座、ライティング講座、子育て中のお母さんへどう地域に関わってもらうかなど、様々な取り組みをしています。足利だけではなく、他地域でも実施できると思います。興味のある方はお問い合わせください。

この記事を書いた人

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代表理事 山田 雅俊

NPO法人コムラボ 代表理事、足利経済新聞 編集長、サードプレース「マチノテ」運営 。生業はIT系。システム開発、Web製作などIT業務の経験を生かし、地方都市における情報格差の課題解決へ向けて企業・NPO法人の両面から取り組む。